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小説ドラゴンクエストW
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「小説ドラゴンクエストW」 久美沙織 エニックス
小説ドラゴンクエストWは、1991年にエニックスから、ハードカバーで刊行されたのが最初です。私はちなみにハードカバーで持ってます。ふっふっふ♪ 1巻「魔起黎明」2巻「闘武群雄」3巻「双華流浪」4巻「天空無限」の全四巻からなり、著者は現在はあらゆるゲームのノベライズをしていらっしゃる久美沙織さん。91年当時は、「MOTHER」と「精霊ルビス伝説」を書かれていた筈ですが、少女小説家のイメージの方が強かったでしょう。(コバルト文庫の「丘の上のミッキー」が代表作)
それから、文庫版、そして現在は新書サイズが出ているはずです。上製本、文庫版のイラストは、いのまたむつみさんが描かれてて、新書サイズ版は違う方がかかれています。スミマセン、名前チェックしてません。 しかし、なーぜかドラクエファンは、小説読書率が少ないんですよ!!おなじ久美沙織さんが書かれてる、任天堂の名作、「MOTHER」は非常に高いと言うのに。何故だー!!! これはもったいない!!是非、是非に読ませなくてはいけない…と言う訳で、PSで発売もされることですし、頑張って10年にわたって注ぎつづけた、愛情とこだわりをココで、一気に爆発させようと立ち上がる事にしました。YEHA!! 小説は、序章、一章、二章、三章、四章、五章の、全六章からなり、各章ずつ文体も話にあわせて、変えてあるという細やかな凝りぶりです。文庫版、ハードカバー版では、全4巻ですが、もしかしたら最近出版されているかもしれない、新書サイズでは知りません。 まあ、同じ全4巻だと思いますけど。
巻の配分は、1巻が、序章と第一章。2巻が二章と三章。3巻が四章と5章の前半――――キングレオまで。そして4巻が五章後半――――キングレオでライアンが仲間に加わるところから始まり、最後の決戦までかかれています。
この小説、「序章」とあるところからも判るように一番最初に語られるのは、「王宮の戦士たち」ではありません。一番最初に語られるのは、実は――ピサロの物語なのです。 魔界は一体どんなところか、ピサロとは一体どんな人物(人間じゃ無いけど)なのか、そしてロザリーとは一体どうやって出会い、どういった関係を気付いていったのか――などが語られます。 ピサロ様、超美形です。いのまたむつみさんのイラストもあいまって超美形です〜〜。叫んじゃうくらいです。きゃあ〜〜〜〜〜。流れるような銀髪!!漆黒の装束!!怜悧な美貌!!ひゃあ〜〜〜。 話としては、陰謀劇とか、そういうものに近いです。様々な思惑と陰謀が、絡まっているって感じですね。後、王宮劇にも近い感じです。 ちょいネタばれになってしまいますが、ロザちゃんとの関係ですが、ロザちゃん、エルフの王様の末娘なんですが、戦争で攻め入った際にピサちゃん、かっさらってきてしまいます。はーい。そのころの年齢ロザちゃん大体5歳。光源氏も真っ青のロリコンっぷりです。しかも、源氏さんはある程度の年齢になってから紫ちゃんに手を出していますが、ピサちゃんは違います。さすが妖魔!!(←違う)
妖魔は少女を外套に包み込むと、彼女の丸くすべらかな頬に、おののくまぶたに、不平そうに突き出した唇に、氷の唇を這わせた。 姫は、なお彼を拒み、時折きつい視線でにらみさえした。だが、その癇癪を起こした顔が、徐々に戸惑うような表情に変わり、やがて小さな胸は、外からもはっきりとわかるほど、どきどきと高鳴りだした。 妖魔の唇は媚薬にひとしく、その爪指は冷たい炎であった。地の下のそして地の上のどんなに心強きものも、けして逃れることのできぬほどの悦びを、妖魔は自在に繰った。彼は誘惑そのものであったから。 無垢な少女は、おのが皮膚の内側に、自分ではない自分を見た。少女の瞳は熱に浮かされたように宙を彷徨い、頬はぼうっと熱くなった。憎いはずの王子に許しを請おうと唇を開けば、甘やかな吐息が我知らずこぼれた。妖魔は唇に冷たい笑みを浮かべ、きらきら光る眼に容赦のない愛をこめて、手の中の小鳥のもがくさまを愉しんだ。 世界は少女の手の内に溶け、沸騰し、散じてまた集った。ロザリーが白い喉をのけぞらせると、蜜色の髪の編みこみを押さえていた宝石細工のピンがはずれた。滝のごとく流れ落ちた髪が、妖魔の黒装束に、黄金の房飾りとなって輝いた。
長くなっちまいましたね。すみません。ココの一連の文章好きなんですよ。きゃーエローって感じ、しません?やあ、最初に読んだ時は気がつきませんでしたよ。はなたれ小娘でしたもん。小学5年生で、私に何を気づけとぉお?!(←逆ギレ) いやともかく、最初のころは、この文章の意図というものにあんまり気付かなかったですね。ただ、ちゅーしてるのかなあ?くらいにしか。気付いたのは、中学校くらいかなあ…?ものすごいエロさ加減にのけぞりましたよ。ええ。ほんとうに。 全体の出来は、もうきちんと大人にも耐えうる文章だと思います。っていうか子供わからんじゃろう。でも子供も読めますよ〜。色々面白いですよ〜。大人から子供まで、本当に楽しめる作品になってるとは思います。 多分、気取ったというか、ちょっと小難しいような文章に触れたのは、これが初めてだったのではないでしょうか?ずい分いろんな意味で影響を受けたような気がします。 ともかく読み始めてしまうと、どんどんと一章丸ごと読んでしまうでしょう。 結構「うえぇ?!こんなことが?!」と思う事もありまして、退屈させない優秀なつくりとなっております。ロザリーヒルでのこととかね〜。ピサロ様が、どうして人間以外には優しいかとか、そこらへんの理由もかかれています。 ピサロ様〜〜〜キャ〜〜〜〜〜♪(←結局それかい)
小説ドラゴンクエストで一番カッコいい男性は、ライアンです。誰がなんといおーと、ライアンです。もう最高です。超カッチョマンです。漢です。 まず、この第一章の文体ですが、多分「ハードボイルド」なんでしょう。だって、剣を拳銃に、鎧をトレンチコートに替えれば、アーラ不思議。何てカッコいいハードボイルドな探偵さんにッ!!って言う感じです。 本当にカッコいいです。なんでしょう。先ずナイスミドルというのとは全然違います。オジサン臭さというのものは、ありません。一切。あと、「ござる」とか言いません。ドラクエ4コマとかでは、いう事が多かったようですけど。一人称は「俺」です。きゃー。ほんとに、多分ハードボイルド的なかっこよさなんでしょう。 ライアンさんの生い立ちは、もちろん小説内の設定だけなんでしょうが、非常に良い感じです。 彼は、山の中の鍛冶屋に生まれましたが、3つくらいの時に家事で家が全焼した際に、一切の身内をなくします。その後しばらく村で育てられてから、10の時独り立ちをして独りで暮らすようになります。そんなある日彼は、狩にきていた王宮の一団に気に入られ、そのまま町で暮らすようになり、やがては大臣に養子として引き取られ、養父亡き後は王宮の騎士に抜擢され、現在に至るとゆーものです。 彼には孤独というものが、常に見え隠れしています。それは、ホイミンとの会話にも現れているんです。例えば――。
「ぼくは臆病だ。ぼくは、自分の手を、まだ汚していない」 ライアンは瞳をすがめた。 彼は驚いていた。己が魂のうちにある葛藤を、出会って間もないホイミンが――ひとではない、魔物と呼ばれることさえある生き物――が、いとも容易く理解してくれたことに。その痛みを、分け持ってくれたことに。
いやん。素敵。(←コラ) なんか、ライアンさんは「殺す」ということに割とためらいというか、葛藤があるみたいです。もちろん戦いの時は、迷わずにずばっとやりますけど、その他のときは葛藤しているみたいなんですね。そういうのは、第五章の仲間との会話シーンにも現れています〜。
「世の中が平和であれば、戦士は技を磨けない。強くなって行く自分を誇らしく思う時、俺は、同時に恐ろしくなります。こんなことが、ほんとうに、自慢できる事なのかと、詰問したくなるのです」
てな感じでしょうか〜。マジで本当に相当カッコいいですねッ!!私は将来ライアンさんみたいになりたいです〜。いえいえ。本当に。誰でも憧れるんじゃないでしょうかね。ライアンさんのような大人のあり方というのは。らぶ。
第二章の「おてんば姫の冒険」は、その気楽〜な音楽もあいまって、ゲームプレイヤーには、明るい章と言う、イメージが強いのですが〜…、ぜんっぜん違います。小説版は。一番殺伐としている章です。 先ずアリーナの一人称が「ボク」なので、驚かれる人が多いかと。でもまあ、ギャルゲーエロゲー界で、一人称が「ボク」の女の子は、もはや一ジャンルなので、全然今見ると、違和感というかはありません。なんでしょう。時代ですねえ。 まあ、そいで一人称「ボク」のアリーナ姫様ですが、すげーおてんばです。おてんばという言葉はもはや死語ではありますが、おてんばという言葉に悪いだろうというくらい、非常に活発でありまする。冒頭のシーンで、窓から入ってくる際に、(ワザトではありませんが)土産とばかりにクリフトの顎を蹴り上げるシーンなどには、ソートー度肝をぬかれたものです。 まあ、上のような事を書きますと、「何処が殺伐としてるんだ。充分コミカルじゃあないか」といわれそうですが、あいや待たれよ。何処らへんかといいますと、まあ全体的な描写ですな。あとカメレオンマンとかカメレオンマンとか。ええ。あとですねー、アリーナ殺伐としすぎですよ。そんなに、殺すのが楽しいですか?って言うくらいに、たのしそーに殺していっています。がすがすと。
その瞳は殺戮への暗い情熱を燃やして冷たく青い星と輝き、弾む息のためにうっすらと開いたままの唇は知らず知らずのうちに舌なめずりをするために、いつも甘やかに濡れていた。あどけない顔に血飛沫を浴び、荒々しい叫びを上げながら、埃っぽい洞窟の風の中を、アリーナは、炎となって駆け抜けた。亜麻色の髪が妖精の裳裾のようにはためいて通った後には、まともに息をしている敵はほとんど皆無であった。(中略)いばらの鞭を振るい、手刀を叩きつけ、肘打ちを、膝蹴りを、体落としぶちかますごと、いかにも気持ちよさそうな笑い声を上げて。
あと、相当な自信家です。カッコいいんだけどね。アリーナ。
『痛い目』はもう見たよ、ブライ。アリーナは思った。 あとは勝つだけ。どうしよう?
なめとんか、小娘。いえいえ。失礼いたしました。アリーナは時々(しょっちゅうともいう)すげー残酷です。ほんとに。恐いくらいに。久美ちゃんの書く女性は恐いですー。きゃー。 あと、ブライが相当カッコいいです。精悍です。きゃー。私の最愛キャラはクリフト君ではありますが、彼は相当私の妄想とかけ離れているので、個人的には、却下。やたら情ない人が好きな人には、オススメ。
さて、第三章です。第三章は、一番ほのぼのとしています。ほんわかしてるというか。やさしい感じが、章全体に漂っています。それは、唯一この章が丁寧語でかかれていると言う事にもよるのでしょうが、描写にもやっぱりほんわかとしたものを入れています。例えば、夕日の描写を二章では「いやに赤い太陽が、その雲を怪我人の包帯(字がちがいますが、この字しか出ませんすみません。)に滲み出した血のように染めてゆく夕暮れ時」としていることに対し、3章は「「はずかしがりの少女のほおのように赤くなった空」となってオリマス。 あと非常にひらがなが多い。同じように丁寧語でかかれている「MOTHER」シリーズなんかよりも、全然ひらがなが多い。 ひらがなを多用することによって、柔らかさを表現しているのでしょうね。やっぱり。 かように、二章の直後に読むと、本当に心が洗われるよう…。そういうのも意識して書いてるんでしょうね。心やさしい中年(笑)と、残酷な少女と言う事。 さて心のやさしい中年トルネコさん。心がやさしいと言うか、少し抜けてると言うか、冒頭でつり銭詐欺に会います。商売人向いてないんじゃないか?オマエ…。 とまあ、しょっぱなから、相当不安にさせてくれますトルネコさん。いやでも、トルネコさんは、人がよくてやさしい。何べんも聞かされたジーさんのはなしを、きちんと聞いてあげています。 商人としての資質は疑わしいですが、トルネコさんは正直ものでやさしいです。みんなから凄く好かれていますね。レイクナバの町の人たちから。さて、ライアンさんもそうですが、久美小説の中では中年がよく悩みます。トルネコも例に漏れず、武器商人としての悩みと言うのがあります。
もともと強いひとは、あんまり武器なんていらないんじゃないか。戦争をやりたがるくらい勇ましいひとには、あんまり売りたくない。弱いひとが、強いひとに、好き勝手をされるのを防ぐためには、ちょっと、いるかもしれないけど。特にほら、魔物が相手だったりすると、話せばわかるって、言ってられなかったりしますから、ぜひともいるような気がするんですけど。
こんな感じです。「んーなあめーことでしょーばいができるってぇのかよぅ」と言う意見もございましょうが、私はそんなトルネコさんのキャラクターが好きです。多分、久美さんも好きだったのでしょう。細やかにトルネコを描写しています。 もちろん、お助けキャラである傭兵のスコット、吟遊詩人のロレンスも出てきます。笑えますよー二人の描写は。
「あんれま」スコットはすこし訛ります。「舟コがもやってあっべ。乗ってみっか」 「待って」ロレンスは何かの誓いをたててるとかで、ちょっと女のひとみたいなしゃべりかたをします。「何かの罠かもしれないわ。気をつけたほうがいいわよ」
…とまあ、小説の特性を生かして、さらに面白キャラクターに仕立てています。かように、3章は確かに短い短い章ですが(だってほとんどはお金儲けだし。)キャラクター性を前面に出した、ユーモラスで中身の濃い内容となっています。
第四章………最愛の章をどうやって紹介しましょう(途方)。はっきり言って、ココに全文を掲載したいくらいなんです。「さあ読め!つべこべ言わずに読め!」って。本当に。 でもそうする訳には行きません。途方にくれながらも、頑張って紹介しましょう。 まず、この章は、マーニャさんの一人称で語られています。ある意味、久美さんが一番得意とする文章でしょう。女性――――少女の一人称というのは「少女小説」では最もありふれた、一般的な、メジャーな手法だからです。 確かに、マーニャさんは「少女」というのは少々とうのたった年齢ではありますが、久美さんは少女小説と呼ばれるジャンルで培ったその力を存分に振るってこの章を書き上げています。 もしかすると、小説ドラゴンクエストWの中で、最も完成度の高い章かもしれません。 ともすると、あーぱー娘に見られがちなマーニャさんですが、きちんとものを考えています。すーごいよく考えています。ほんとに。凄く彼女は頭がいいです。勉強ができるとかではなく。 彼女は、孤独な人です。ミネアという妹がいますが、それでも彼女は、根底的な場所で「独り」です。独立した自我を持つ、女性。それがマーニャです。 冒頭部、彼女はこういうのです。
むかし、愛を踊ってた事がある。 初恋のときめき。片思いの切なさ。甘い嫉妬と、いつも遅すぎる後悔。浮気をとっちめるときは鬼になり、いたわる時にはやさしい母にもなった。ありふれた愛のいろんな場面を、あたしはみごとに踊ったものだった。 男たちが夢に見るような女、色っぽくて、ちょっと莫迦で、あふれんばかりにに愛情深い女の顔を、とてもじょうずに、してみせてあげた。 おかげで、儲かったし、人気者だった。生きてくのが楽しかった。 でも、いま、あたしのこころにあるのは、ただひとつ。 ――――復讐。 だからおどる。 (中略) あたしはジプシー、情念の娘。 けしてあきらめない。けして泣かない。けして怯まない……。 けれど、拍子抜けしちゃうわね。 男たちの口笛。万雷の拍手。いつもより、すごいみたい。 (中略) 誤解だってば。これはね、復讐の激怒にかられた踊りなのよ。そんな、人に喜んでもらえるよーなもんじゃないはずだってのに。あーあ、芸術家って、孤独よね。お客さんたちにしてみれば、このあたしのグラマーな体の中に、愛らしい顔の奥に、こんなまっとうな考えが納まってるなんて、想像もできないんだろーけど。 ま、ウケるのはね、結局、嬉しかったりして。許しちゃうけど。 虚しいね。
何故、彼女が、こういう部分を出さないかと申しますと、「似合わないから。」それと「ミネアとの役割分担」なんだそうです。「話がわかりやすくなるから。」彼女はそういいます。
ほんとに何も考えていないわけじゃないのよ。ずっと考えてる。顔に出さないだけ。
でもそれでは、あなたはずっと孤独でしょう?私はそういいたくなります。それでも。それでもマーニャは、自分のスタンスと言う物を、変えないのです。 彼女たちを育てたドルガンは、小説の設定では、実は本当の父親ではなく、養父という事になっています。彼女たちは流浪の民の子供で、コーミズの村の近くを通った時に、一家(あるいは一族?)全員を魔物に殺されてしまいます。 ただ二人、残った彼女らを拾ったのが、ドルガンだったという訳です。 だからでしょうか。彼女たちの養父ドルガンに対する気持ちは、父親に対する「それ」を超えているようにすら思えるのです。
この世で一番好きなひと。この世で一番頼りになる人。
彼女は、そう言っています。 一番頼りにしていた父。(あるいは恋愛感情に近いものすら抱いていた?)その父を殺された、怒り、憎しみ、やり場のないどす黒い激しい感情を抱いて、彼女たちは旅に出ます。彼女らの感情には、救いが無い。ただ怒りが、復讐心が彼女たちを突き動かしているだけ。どこかしら、不毛な道程。
ちくしょう。おまえらのせいだ! あたしは涙の粒を拳でぶっちぎって、思い切り下品な罵声をあげ、よく見えない敵を、殴り、蹴り、ふり飛ばした。(中略) 気がつくと、ミネアも夜叉みたいな顔をして暴れてる。もう、くさり鎌、自由自在に使いこなしてる。刃が光り、悪魔の首を叩き落すと、ぱぁっと赤い花火があがる。敵の返り血を浴びて、ミネアは、狂ったように笑った。 (中略) よかったね。あたしたち。やつあたりできる相手が、こんなにたくさんいてくれて。
彼女たちの一番辛いところ。それは、「自分自身を許せていない」という事。父を守りきれなかった深い悔恨が、彼女たちを責める裁きの刃となって、彼女たち自信を傷つけています。だからこそ。だからこその復讐。 「死」という裁きを求めての?
「洞窟に行ってみて、よくわかった。バルザックの後ろには、強い魔物がついている。キングレオの城に行けば、返り討ちにあって、死ぬかもしれないよ?」 「……本望だ、と言ったら、軽蔑しますか」 「いや」(中略)「だとすれば、自分も軽蔑しなきゃならないことになるだろうからね……(略)」
会話の相手は、ドルガンの愛弟子であったオーリンです。本当は、直前の長台詞が本当にすばらしいのですが。(本当に。この章一番の見所です。ジーンと来ます。) それから。久美さんの作風として、「きちんと他の話を踏襲する」と言うものがあります。他の話とは、「知られざる伝説」「モンスター物語」などです。 「知られざる伝説」で語られているとおり彼女たちもキングレオの国王と懇意にしています。国王は、ドルガンの錬金術の研究に投資してる、いわば、スポンサーな訳です。 そんなわけで、彼女たちは国王を、父、あるいは祖父のように慕っています。その感情はドルガンに対するものよりも、あるいは本当に身内的な愛情に近かったかもしれません。
マーニャとミネアは、よく似ています。多分、自分たちが思っているよりもずっと。だからこそ、彼女たちはより一層の孤独に追いやられていくのです。「嫉妬」と言う感情によって。 似ているから、同じ感情を持ってしまう。でも、身体は二つであり、また別個の人間であるのだ。認められると言うのは、どちらかただひとり。そんな時には。 四章には心なしかそんな描写が多いような気がします。あまりに似ている二人の姉妹だからこそ。ただ二人きり、この世に残された姉妹だからこそ。あまりに対照的な二人の姉妹だからこそ。 一番の孤独感。それが漂っているのが、この四章でしょう。必見です。マーニャのイメージが変わること請け合い。ラスト、ラストの部分。バルザックとの決戦からラストの部分は、本当に物凄いです。泣けます。
さーて、このゲームで一番の本編となる、第五章の登場です。第五章は、ゲームのOPと同じように、山奥の村が攻め込まれるところから始まります。 勇者となる少年の名前はユーリル。北欧(ノルウェーとか)の方でのクリスマスをさす言葉です。(不確か。でもお祭りであった事は事実。)山奥の村で密やかに、伸びやかに育てられています。彼の描写は、文中ではこうなっています。
髪は黒、ただし直射光の中では鮮やかな翠。角度によっては、森の大気を呼吸しつづけた十七年の生涯を表すかのように、苔むした樹皮さながらの、まことに不可思議な色に見えた。瞳は煙る褐色、だが、その心のうちに応じて、時に、カーネリアンのごとく、きらめき光った。
ちょっと色気すら感じる、伸びやかで美しい少年。それが、本編の最後の主人公となる勇者、ユーリルです。 彼は、やっぱりゲームの原作どおり、シンシアの事が大好きです。シンシアとは、実はぼんやりとした顔をしておきながら、Bまで進んでいます。(言い方が古いなあ)きゃ。やらし。 本当に彼は、最初はただの少年です。ただ、そう。すこし大人しいかもしれないし、想いを寄せる少女に対しては、ほんのすこし臆病かもしれない。それでも。そんなことはただ「個性」と言う一言で済ませられることです。そういう、些細な事。 けれど。彼はただの少年ではなくなります。村が壊滅する事。その憎しみが、彼を「勇者」に変えるのです。ブライはこういっています。
世が乱れ、時が滞り、世界の均衡が崩れる時、際立たしく対立する者たちが現れる。彼らは、闘い、融合し、爆発し、新しい何かを生み出す。
さらにこうも。
ユーリルは、デスピサロを求めた。 ユーリルが、勇者になるには、デスピサロが必要だった。 ユーリルは、デスピサロを呼んだ。
勇者と、デスピサロと言うものは、そう言うものです。古の昔に定められた運命の、宿命の二人。 さて、山奥の村を旅立った勇者、ユーリル。彼はまず仲間集めをしなければなりません。仲間が集っていく様は、それぞれミネア、トルネコ、ブライ、そしてライアンの一人称となって語られています。 それぞれに個性的で面白いです。特にブライ!病に倒れたクリフトをとっ捕まえて、「ナントカは風邪をひかないと言うから、恐らく風じゃあなかったろう」なんて言っています。オイオイ。言い過ぎだって。病人になってもからかわれてしまうクリフト。全く浮かばれません。
さて、ちょっとコアなファンには嬉しい「サイドストーリィを踏襲した設定(あるいは文章)」ですが、五章でもしっかり生きています。 「ドラゴンクエストWモンスター物語」にでてきました、リバストと大ニワトリジャックとの物語や、「ドラゴンクエストW知られざる伝説」に出てきたピサロナイトとピサロの友情。そして、サントハイムのネコ、ミーちゃんとピサロの触れ合い…。など全てきちんと踏襲されています。嬉しいですね。 そして!そういったサイドストーリーを一切読んでいない方でも楽しめる事が有ります。それは、トルネコがちゃんとゲーム中での行動をすると言う事です。砂を投げようとして失敗したり、子守唄を歌ったりと大活躍です。ことに、子守唄はエスターク戦で、絶大な効力を発揮します。
また、モンスターたちも非常に個性豊かにかかれています。序章、及び第五章に登場する、ブラックマージと夜の帝王。二人の会話はブラックマージが夜の帝王に教授すると言う形で、設定をわかりやすく説明してくれています。(そしてこの二人がラストに大どんでん返しを行います)いつも空腹で、トルネコを食べたいと欲しているミニデーモンのバーガス。中間管理職の悲哀を漂わす、カロンのダグラス。ピサロの手先のアシペンサ…。などなど。モンスターはただのおどろおどろしい敵ではない、そういったドラゴンクエストのスピリットのようなものを、久美ちゃんはきちんと書いていてくれます。
さて、長々と説明をしてきましたが、それ以外にもたくさんの見所があります。アリーナにからかわれて怒るユーリルや、マーニャとミネアにひんむかれてしまうクリフト。歳の話をして、うっかりマーニャの不況を買ってしまうライアンとトルネコに、マーニャがライアンに対してほのかな思いを抱き始めた事に気づくミネア…。 そして、ピサロとユーリルの宿命。 八人は集い、そして光となり収束されていく…。光の円環。それが、この物語のラストです。ほんとうに、ゲームのノベライズとしては間違いなくトップの文章力、面白さでしょう。これは、単体の小説としての完成度も高いです。 間違いなく、オススメ。プレイした人も、プレイしていない人も一読する価値があります。実際うちの両親は、ドラクエを未プレイでしたが、(うちにはFCがなかった)小説を全館読みきり、面白いと言っていました。 どうしてこんなにいいものを、ドラクエのプレイヤーは読んでくれないのでしょうか。泣けてきます。現在ブックオフなどでよく見かけます。迷わず購入して損はないでしょう。私としては、やっぱりいのまたさんのイラストの小説をオススメしたいです。美麗ですから。 最後に、文庫版の1巻2巻の表紙。これをPSのパッケージにして欲しいなあ…て無理か。
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